吹き付け工法による外壁塗装のメリット・デメリット!ローラーとの違いも解説
2021.11.29 (Mon) 更新
塗装業者と話をしたり、塗装についてご近所さんと話したりしたときに「吹き付け」という言葉を耳にした方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
外壁塗装には「ローラー工法」と「吹き付け工法」の2つの方法があります。
吹き付け工法は「模様付けができる」「早く塗装が仕上がる」などメリットが多いですが、一方でデメリットも多い塗装方法です。
しっかりとメリット・デメリットを把握し、後悔のない外壁塗装工事にしましょう。
この記事では、吹き付け工法を用いるメリット・デメリット、吹き付け工法の種類や注意点についてもご紹介します。
まずは、そもそも吹き付け工法とは何かからチェックしていきましょう。
目次
外壁塗装の「吹き付け工法」とは?
「吹き付け工法」とは、専用のスプレーガンで塗料を吹き付けていく塗装方法です。
モルタル壁の仕上げに使われることが多く、「複層仕上げ塗装」ともいいます。
スプレーガンには「エアスプレーガン」「エアレススプレーガン」などの種類があり、コンプレッサー・プランジャーといった工具を使用して塗料を噴射します。
コンプレッサー・プランジャーによって少々大きめの音が出るため、住宅が密集している地域では音による近隣トラブルに発展する可能性がある点に注意しましょう。
デメリットもあるものの、吹き付け後にローラーやコテを使い模様付けができ、おしゃれな模様入りの外壁に仕上げられます。
外壁塗装の「吹き付け工法」の種類
「吹き付け工法」と一口に言っても、すべて同じ塗装方法ではありません。
塗装方法や仕上がりにより、主に「吹き付けタイル」「リシン」「スタッコ」と3種類へ分けられます。
どういった違いがあるのか、それぞれ確認していきましょう。
艶あり・高耐久性の「吹き付けタイル」
吹き付けタイルは、粘度の高い主剤(塗料)を吹き付けて模様を付けたのち、中塗り・上塗りと塗料を塗り重ねて完成させる方法をいいます。
別名として「玉吹き」「ボンタイル」ともいい、凸凹の模様が特徴的です。
特に、外壁へデザインを施しておしゃれに仕上げたい方・オリジナリティのある外壁に仕上げたい方におすすめの塗装方法です。
下塗り・模様付け・中塗り・上塗りと4工程が必要なため塗装に時間がかかりますが、その分ツヤがあり、耐久性の高い外壁に仕上がります。
塗装にかかる費用相場は2,700円/㎡~と、比較的高めです。
低コスト・シックなデザインになる「リシン」
リシンは、モルタル壁の仕上げに多く用いられる一般的な塗装方法です。
塗料に砂状の骨材を混ぜたものを吹き付けて外壁を仕上げるため、砂壁のようなざらざら感がある仕上がりになります。
先ほどご紹介した「吹き付けタイル」と異なり、短時間で施工できる・比較的低コストで塗装できるといった点が大きなメリットです。
骨材の大きさを変えれば仕上がりの細かさを変えられるだけでなく、リシン加工後にブラシで表面を削ってなだらかな表面に仕上げる「リシン掻き落とし」といった加工方法もあり、イメージに合わせた調整が可能。
シックなデザインの外壁や土壁のような仕上げをしたい方におすすめです。
ただし、塗膜が硬く薄いため、ひび割れが入りやすい点に注意する必要があります。
しかしそれも、塗料選びで対策が可能です。
通常のアクリル樹脂を使用した場合は、4~6年程度の耐用年数となるものの、弾性塗料を使えば8~10年ほど持ちます。
リシンは、1,500円/㎡~の価格相場となっています。
重厚感のある「スタッコ」
「スタッコ」は、塗料にセメントと骨材を混ぜたものを吹き付ける塗装方法です。
塗膜の厚みが5~10mm程度の厚さになり、重厚感ある仕上がりとなります。
またそのまま乾燥させて仕上げる「吹き出し仕上げ(吹きっぱなし仕上げ)」と、吹き付け後にローラーやコテで押さえて凹凸模様を付ける「凸部処理仕上げ(ヘッドカット仕上げ)」も可能。
施工の難易度が高いため塗装できる職人が限られるものの、多彩な外壁が楽しめるでしょう。
塗装の価格相場は2,800円/㎡~と、吹き付け工法の中でもっとも高くなる傾向にあります。
外壁塗装の「吹き付け工法」と「ローラー工法」の違い
外壁塗装には、「吹き付け工法」のほかに「ローラー工法」といった方法もあります。
ローラー工法とは、ローラーや刷毛を使って職人が手作業で塗装していく方法です。
ローラー工法は吹き付け工法と比較するとデザイン性が劣るものの、
- 飛散する塗料が少ないため、塗料の飛び散りによる近隣トラブル・より塗料が必要になり費用が嵩む、といった心配が少ない
- コンプレッサー・プランジャーによる騒音で、近隣へ迷惑をかけずに済む
- 吹き付け工法ほどの高い技術力を必要としないため、施工不良が少ない
といったメリットがあり、主流の塗装方法になっています。
「吹き付け工法」がおすすめのケース
吹き付け工法がおすすめなのは「外壁に模様を付けておしゃれに仕上げたい」「広範囲に塗装する」といった場合です。
スタッコや吹き付けタイルでご紹介した通り、吹き付け工法を選べばデザイン性のある外壁に仕上げられます。
またスプレーガンを使い広範囲の塗装も比較的短時間で終えられる吹き付け工法は、大きな住宅・アパートなどの塗装におすすめです。
しかし、近隣トラブルを避けるため取り扱いのない業者が多い・取り扱いがあっても知識や経験が不足している業者も多いことも。
吹き付け工法で塗装したいと考えている場合は、一層慎重な業者選びが必要です。
外壁塗装で「吹き付け工法」を採用するメリット・デメリット
吹き付け工法の種類やローラー工法との違いを確認してきましたが、吹き付け工法を選ぶメリット・デメリットには具体的にどういったものがあるのでしょうか。
それぞれ確認してみましょう。
「吹き付け工法」のメリット
はじめに、吹き付け工法で得られるメリットについてご紹介します。
大きなメリットとして、オリジナリティや丈夫さ・費用・時間の3点が挙げられます。
「吹き付け工法」でオリジナリティが出せる
吹き付け工法は、吹き付けタイル・リシン・スタッコそれぞれでオリジナリティのある外壁に仕上げられます。
加えて、スプレーガンの先端を調整し凹凸の大きさを変える・色の選び方・ツヤの有無などを組み合わせればデザインの幅が広がり、オリジナリティを強く出せる塗装方法です。
好みの質感・色の外壁・手入れのしやすさなどを考慮し、あなたにぴったりの外壁に仕上げることができるでしょう。
「吹き付けタイル」なら3層形成で丈夫
「吹き付けタイル」で塗装した場合、模様付けのほかに3層の塗装(下塗り・中塗り・上塗り)がされ丈夫な造りになります。
「ひび割れしにくいしっかりした外壁塗装にしたい。でもデザイン性も捨てがたい」と悩んだ際にぴったりの塗装方法といえるでしょう。
加えて吹き付けタイルの場合、表面がつるつるした仕上げになるのも嬉しいポイント。
汚れがつきにくいため、お手入れがこまめにできなくても美観を損なわずにすみます。
丈夫でおしゃれで綺麗な外壁が理想なら、積極的に検討しておくべき塗装方法です。
「吹き付け工法」の方がコストも時間もかからない
吹き付け工法は、スプレーガンを使用することで広い範囲を一気に塗装できます。
そのため塗装作業にかかる時間が短く、大きな家で塗装範囲が大きい場合も早く塗装作業を終えられるでしょう。
加えて、費用が比較的低く抑えられるのも嬉しいポイント。
ローラー工法の場合は2,000~4,500円/㎡程度がかかるのに対し、吹き付け工法なら1,800~4,000円/㎡と、少々安い傾向にあります。
「近隣の住宅との距離がなく、作業に手間がかかる」といった理由により価格が高くなることもあるため、必ずしもローラー工法よりも安いわけではありませんが、費用を抑えたい場合は確認しておくのがおすすめです。
「吹き付け工法」のデメリット
吹き付け工法はオリジナリティのある丈夫な外壁を、コスト・時間をかけずに完成させられるメリットがありました。
その一方で、デメリットにはどういったことがあるのでしょうか。
ここでは4つのデメリットをご紹介します。
騒音トラブルになる可能性がある
スプレーガンを使用する場合は、コンプレッサーが必要不可欠です。
塗装作業を行う間はもちろんスプレーガンやコンプレッサーも作動するため、住宅街では騒音トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
ローラー工法の場合はローラーで手塗りをしていくため音が出ないことを考えると、吹き付け工法ならではのデメリットといえます。
塗装工事の前には、しっかり近隣への挨拶まわりをして説明しておくと安心です。
飛散するため塗料や養生が多く必要・臭いトラブルも
スプレーガンで塗装をする場合は塗料を噴射することにより、周囲へ塗料が飛び散ってしまいます。
そのためローラー工法よりも塗料が多く必要になるだけでなく、周囲にある物へ塗料が付着する可能性も。
そうした事態を避けるため、庭木・車・窓などに念入りな養生作業を行う必要があります。
その場合養生貼りに時間がかかり、結果的にローラー工法と変わらない時間がかかることも考えられます。
さらに、塗料が飛ぶことにより臭いも広がりやすくなります。
塗料の飛び散りのほか臭いによる近隣トラブルにも注意せねばならず、気を使うことが多い点がデメリットといえるでしょう。
職人の技量が要求される
吹き付け工法で塗装をする場合、塗装する職人の腕も重要です。
吹き付け工法は一見簡単そうに見える作業ですが、経験不足の職人が塗装したり、素人がDIYで塗装したりした場合は塗りムラができる可能性が高い、難しい作業。
綺麗で機能性もしっかりした外壁にしたい場合は、豊富な経験を積んだ職人に依頼するのが重要なポイントです。
汚れがつくと洗浄に時間がかかる
吹き付け工法で塗装した外壁は、お手入れが少々大変な場合があります。
吹き付けタイルはつるつるした表面をしているため汚れがつきにくいですが、一度凹凸部分に汚れが入り込んでしまうと落としにくくなるのです。
スタッコも汚れが入り込むと洗浄しにくく、リシンは汚れを落とそうとして強くこすると壁を傷つけてしまう恐れがあり、取り扱いには慎重さが求められます。
汚れがこびりついてしまわないよう、美観を保つためには時折柔らかいスポンジで掃除しておく必要があるでしょう。
サイディングにも吹き付け塗装はできる?
「吹き付けが気になるけど、サイディングを貼っている我が家はできないのかな」とお思いになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はサイディングにも、吹き付け塗装が可能な場合もあります。
まずは専門知識をもった業者へ相談し、ご自宅のサイディングでも吹き付け塗装ができるかどうかを相談してみましょう。
まとめ
吹き付け工法はローラー工法と異なり、専用のスプレーガンで塗装する方法をいいます。
塗料を噴射するため塗料が飛ぶ・噴射の音がうるさい場合があるといったデメリットがあるものの、オリジナリティのあるおしゃれな外壁塗装ができる・塗装が比較的早く終わるといったメリットも。
吹き付け工法にも「吹き付けタイル」「リシン」「スタッコ」の3種類の塗装方法があり、仕上がりがそれぞれ異なります。
塗装業者へ相談し、吹き付け塗装ができるかどうか・イメージに合う塗装はどのタイプかを相談してみましょう。